2023.09.24
ニデックのTAKISAWA買収に見る工作機械業界の明日
リージョナルキャリア岡山のコンサルタント、瀬川です。
9月13日、岡山市に本社を置く工作機械メーカーTAKISAWAがニデックからのTOBの提案受け入れを表明、翌14日より公開買い付けが開始となりました(買付期間:2023年9月14日~2023年10月27日)。
これによりTAKISAWAはニデックの完全子会社になる見通しです。
(画像出典:株式会社TAKISAWA企業HP)
ニデックは、世界トップの工作機械メーカーグループになるという目標を掲げており、2021年に三菱重工工作機械(歯車加工機械)を買収。翌年の2022年にはOKK(マシニングセンタ)、そして今回のTAKISAWA(旋盤)へのTOBと、目標を達成するために着実にピースを埋めにいっている印象です。
「工作機械」と言っても、いくつかの機種に分かれているわけですが、日本工作機械工業会によると以下のように区分されています。
主な機種 加工方法 旋盤 工作機械の中で数多く用いられている代表的な機種の一つで、一般に円筒または円盤状の工作物を回転させて加工する機械です。この機械により行う加工には、外丸削り、面削り、テーパ削り、中ぐり、穴あけ、突切り、ねじ切りなどがあります。 ボール盤 ドリル工具を回転させて穴あけ加工を行う機械で、リーマ仕上げ、ねじ立てなどの加工も行うことができます。 中ぐり盤 ドリル工具などであけられた穴の内面を、より精度よく、所定の大きさに加工(中ぐり加工)する機械で、他にドリル加工、フライス加工などもできます。 フライス盤 フライス工具と呼ばれる工具を回転させ平面、曲面、みぞなどを加工する機械です。加工に用いる工具には、正面フライス、エンドミル、みぞフライスなど多くの種類があります。 研削盤 バイト、フライス工具などの切削工具の代わりに砥石車を用いて加工する機械で、加工精度がよく、切削加工より優れた仕上げ面が得られるという特長を持っています。 歯切り盤 ホブカッタ、ピニオンカッタ、ラックカッタと呼ばれる工具を用いて歯切り加工をする機械です。 マシニングセンタ 中ぐり、フライス削り、穴あけ、ねじ立て、リーマ仕上げなど多種類の加工を連続で行えるNC工作機械で、それぞれの加工に必要な工具を自動で交換できる機能を備えています。機械の軸構成によって横形、立て形、門形など各種のマシニングセンタが使われています。近年では、直交3軸と旋回2軸とを同時に制御することで、更なる複雑形状の加工を可能にする「5軸制御マシニングセンタ」の普及が進んでいます。 ターニングセンタ 旋盤を複合化したNC工作機械です。NC旋盤の機能をより高め、多くの工具を備え、旋削加工の他に工具を自動で交換できる回転工具主軸を持ち、フライス削り、穴あけ等の加工も行うことができます。更に、旋回(割出し)しながら加工が可能な回転工具主軸を備える機械を特に「(旋盤形)複合加工機」と呼び、近年急速に普及が進んで います。 放電加工機 電気による放電エネルギーを利用して加工を行う機械で、放電を行う電極の形状により形彫り放電加工機とワイヤ放電加工機に分けられます。その他、レーザのエネルギーを利用して切断、穴あけなどをする「レーザ加工機」や、工作物と超音波で振動する工具との間に、と粒や加工液を入れ、工具を工作物に押し付けながら除去加工する「超音波加工機」などを含め、特殊加工機と総称しています。
(引用元:日本工作機械工業会HP)
ちなみに、買収した三菱重工工作機械の現社名は「ニデックマシンツール」、OKKは「ニデックオーケーケー」となっていることから、TOBが成立すればTAKISAWAは「ニデックタキサワ」となるのでしょうか。
今回のTOBがひとつキッカケとなり「業界再編が進むのでは?」という声があちこちから聞こえてきますが、個人的には、そうであってほしいと思っています。
現在、日本工作機械工業会の会員企業数は全国で109社(2023年6月1日現在、日本工作機械工業会会員名簿より)。
この109社のうち、旋盤を作っている会社は26社、マシニングセンタは40社となります。もちろん、旋盤でもマシニングセンタでも用途によってさらに細かく分かれていますし、各社それぞれに独自性や優位性はあるのでしょうが、今後よりシナジーを生み出すための再編が進んでも不思議ではありません。
ちなみに北國フィナンシャルホールディングスグループのCCイノベーション社によると、工作機械メーカーの9割以上が従業員300人未満の中小企業や町工場となっています。
※参照:株式会社CCイノベーション「業界レポート 工作機械製造業界」P5
直近2022年の工作機械受注額は1兆7,596億円。今後も半導体や電気自動車(EV)関連の設備投資により、市場は拡大していくと見られています。
(画像出典:日経クロステック「工作機械の2022年受注額は1兆7596億円、史上2番目の高水準」)
とは言え、多くの会社が同じカテゴリーの製品の開発を行い日本企業同士で鎬を削っている印象です。そしてそれは技術面だけではなく、当然、価格競争にも繋がっているでしょう。
今回のニデックからの提案を受け入れたTAKISAWAの原田社長、そして、ニデックの永守会長兼CEOのコメントがとても印象的でした。
原田氏「(単独で生き残りを図るより、工作機械でニデックが目標に掲げる)世界一を目指すほうが従業員も取引先も幸せ
」-2023年9月13日 日本経済新聞
永守氏「これ(TAKISAWAへのTOB)は敵対的とかではなく、日本の工作機械業界が中国に負けないように、戦っていける規模にもっていかないと(いけないという思いもある)
」-2023年7月21日 日刊工業新聞
今後も工作機械業界の動向に注目していきたいと思います。