2022.05.19
アメリカで続く賃金インフレ-「安いニッポン」からの脱却はいかに
リージョナルキャリア岡山のコンサルタント、瀬川です。仕事柄、海外の労働市場の動き、とりわけアメリカの動きは気にしてウォッチしているのですが、ここ最近特に話題となっているのは賃金の高騰です。
アメリカで続く「賃金インフレ」。一方日本では・・・
背景としては、3月よりも低下したとはいえ、4月のインフレ率が前年比8.3%ということもあって、物価上昇にともなう賃金上昇圧力が強まっていること、また、それと同時に深刻な人手不足となっており、他社から人材を引き抜くためであったり、既存の社員を流出させないために賃金が上昇しているということです。
「でも、それってGAFAMみたいなビッグ・テックの話でしょ?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
全米企業エコノミスト協会が4月25日に公表したアンケート結果によると、業界や職種を問わず、回答企業の7割が賃上げを実施していると答えています。
日本では、以前から言われ続けていることではありますが、特にここ最近「安いニッポン」「低所得ニッポン」という見出しが躍っています。
日本の平均給与はバブル崩壊後の1992年と2018年とを比較すると40万円近くも下がり(472万円→433万円)、OECD加盟諸国の平均賃金比較においても、アメリカとは1.7倍ほどの差をつけられ、韓国にも抜かれ、加盟諸国の平均以下の数値であることがよく取り上げられています。
うーん、なんとも残念な現実です。。。
なぜ日本の賃金が上がらないのか?
断定的なことは言えないものの、やはり新卒一括採用・年功序列・終身雇用制度などによる人材の流動性の低さや労働分配率の低さ、非正規社員の賃金水準の低さなど様々な要因が絡み合っているように思います。
また、それに加えて、私が実際に企業とやりとりをする中で強く感じることは、多くの企業が中途社員を採用するシーンにおいて、その人材の市場価値をもとに賃金を算出するのではなく、内部の公平性(横並び)を重視して算出する賃金システムになっているということです。
冒頭、アメリカで深刻な人材不足とお伝えしましたが、日本も深刻な人材不足に直面しており、2020年に7406万人の生産労働人口は2065年には4529万人にまで減少する見通しです。
そんな中で労働力を担保するには、やはり賃金改善は大きな課題です。
先日、帝国データバンクが実施した「岡山県 2022年度の賃金動向に関する企業の意識調査」によれば、「賃金改善ある」が過去10年で最高の60.2%になり、その理由のトップは「労働力の定着・確保(85.8%)」ということですので、変化の兆しを感じるところですが、内部公平性や同じエリアの他社の目(地域公平性?)から脱却し、スピーディーかつ大胆な変化を期待したいところです。