2021.12.04
企業の「後継者不在率」過去10年で最も低い61.5%-同族承継から「脱・ファミリー」の動き継続
その写真館は創業が明治6年という歴史ある写真館で、我が家ではこれまでは全国チェーンの写真館に行っていたのですが、そろそろ違う写真館にも行ってみたいね、という妻の希望もあり初めて足を運んでみました。結論から言いますと、とても良い写真を何カットも撮って頂き、写真選択のところで妻と揉めるという良いような悪いような結果になりました(笑)
この写真館、お父さん・お母さん・息子さんの家族3人で営んでおり、お母さんが着付け&メイク担当、お父さんが変顔や各種人形などを巧みに利用して子供を笑わせ(ウンチのおもちゃが一番の相棒)、カメラマンである息子さんがその一瞬を逃さず撮影するという、見事なコンビネーションによって短時間で効率的に良い写真撮影を実現しています。
その生産性の高さからは創業明治6年という歴史の重みは全く感じないのですが、なんと言いましょうか、それぞれのプロフェッショナリティとチームワークに感服しました。仕上がりまでは結構時間がかかるようなのですが、とても楽しみです。
さてさて、そんな家族経営の写真館にも関係する話ですが、先日、帝国データバンク社が『全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)』の調査結果を発表しました。
調査結果によりますと、中国地方の企業の後継者不在率は67%で全国9エリア中、北海道に次いで2番目とのことで、県別でみると、1位は鳥取県(74.9%)、2位は沖縄県(73.3%)、3位は島根県(72.4%)、岡山県は17位(63.4%)となっています。
後継者がいない(決まっていない)ことは現経営者自身だけでなく、そこで働く従業員にとっても深刻な問題であると思いますが、この調査結果の中で私が一番注目したのがこちらです。
"代経営者との関係性(就任経緯別)をみると、2021年の事業承継は「同族承継」により引き継いだ割合が38.3%に達し、全項目中最も高かった。しかし、2017年からは3.3ptの低下となり、親族間の事業承継割合は緩やかに縮小傾向をたどっている。
代わって存在感を発揮しているのが、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」で31.7%"
"「創業者」「同族承継」などファミリー企業でも「非同族」への事業承継=脱ファミリー化を考える割合が高まっている。"
「創業家がオーナーで、事業を引き継いだ社長は非同族の雇われ社長」ということであれば『脱ファミリー』とは言えないと思いますし、それでは結局前例を大きく変えることは難しいと思いますが、でも脱ファミリー化が進むこと自体は私はとてもポジティブに捉えています。
そもそもですが、顧客に喜ばれる付加価値の高い商品やサービスを提供し、そこで得た利益を教育や報酬として人にしっかりと投資をする(人の可能性を信じ、人に投資をする)会社経営をすれば、本質的には同族でも非同族でもどちらでも良い話なのですが、ここのところ、同族経営のメリットよりもデメリットがの方が加速度的に大きくなっているように感じるのです。
同族経営のデメリットとして一番言われていることは、「経営が独善的になりやすい」という点です。経営者が会社のオーナーですからガバナンスが効かず、独善的なワンマン経営になるってやつですね。
VUCAの時代なので、その時々の状況に応じた素早い意思決定が重要であり、今の時代には"正しく"独善的なワンマン経営が強い、ということもよく理解できます。ただ、同時にVUCAの時代には多様性への寛容さも重要で、多様性の前提とは「人の可能性を信じる」ということだと思うんですね。
その点では、非同族経営企業と比べると同族経営企業の方が多様性への寛容さが低く、そこにフラストレーションを感じる人が早期に離職したり、転職シーンにおいても、そこを重視する求職者に選ばれない、ということが頻繁に起きているように思います。
また、ある同族経営の会社で、実務経験が全くない社長の奥様がいきなり取締役となり各部門に口を出す、なんて話を聞いたことがありますが、あからさまにこんな身内びいきをするような会社で働きたいと思う人なんて普通はいませんよね。誰しも多様性、そして公平性を大切にする会社で働きたいと思うものです。
繰り返しになりますが、同族だから、非同族だから、という話ではありませんが、それでも経営者の世代交代・若返り、そして脱ファミリー化がより進んでいくいいな、と思います。