ナガオ株式会社
小山修二さん(仮名・総務経理) 44歳
10年続いた単身赴任から、家族の笑顔が待つ我が家へUターン。
転勤の辞令が出た時、子どもをそのまま今の学校に通わせてあげたい、そう考え単身赴任を選択することも珍しくない。小山さんもその1人だったが、東京での単身赴任生活は10年間も続いていた。気がつけば、長男は大学生。自分は44歳に。仕事は楽しかったが、その一方で失ってきた時間の重さが徐々に身に染みてきた。「長男の中学、高校時代を、私は知りません。気がついたら、大きくなっていたという感じ。購入したマイホームにも、ほとんど住んでいません(苦笑)」。いつまで単身赴任生活が続くのか?自分は何のために働いているのか?そう自問自答した小山さんの答えは、「家族で過ごす時間を大事にしたい」ということだった。岡山に転職したことで、帰宅時間も早くなったと喜ぶ小山さん。今は妻の手料理とともに、家族と食卓を囲む当たり前の幸せを、毎日かみしめている。(※本記事の内容は、2015年2月取材時点の情報に基づき構成しています)
- 転職回数
- 1回
- 転職期間
- エントリーから内定まで294日間
転職前
- 業種
- 小売チェーン
- 職種
- 経営企画
- 業務内容
- 店舗オペレーションのマニュアル作りから、数値データの分析、HPの作成、店舗を含む全社の予算・実績管理、IR全般まで幅広く
転職後
- 業種
- メーカー(化学工業薬品)
- 職種
- 総務・経理
- 業務内容
- 経理を中心に担当していますが、給与計算から社会保険、決算書作成、納税等、管理業務全般
定年まで単身赴任で良いのか?「家族との時間」を大切にするため転職を決意。
現在のお仕事はどんな内容ですか。
岡山に本社がある化学工業薬品メーカーで総務をしています。社員数は65名で、昭和6年創業の歴史ある会社です。メインの製品は水硫化ソーダや硫化ソーダで国内トップシェアメーカー。これらにはいろんな用途があって、例えばPPS樹脂などの機能性プラスチックや医薬品・農薬などの原料、重金属を含む排水を無害化にする処理剤など、幅広く使われています。総務部は5名。私は総務課長を務めています。経理を中心に担当していますが、給与計算から社会保険、決算書作成、納税など、管理業務を全般的に幅広くやっています。
入社前のご経歴を教えてください。
大学を卒業して最初に就職したのは、広島の機械メーカーでした。そこで6年間、経理を経験。その後、家庭の事情により、妻の実家がある岡山に移り住み、関西・関東を中心にチェーン展開している小売チェーンに転職しました。はじめは経理でしたが、後半はゼネラルマネージャーとして、店舗運営全般を経て、経営企画に関わっていました。店舗オペレーションのマニュアル作りから、数値データの分析、HPの作成、店舗を含む全社の予算・実績管理、IR全般まで、幅広く携わっていました。
転職のきっかけは?
前職の会社が急速に拡大したこともあり、入社して5年後に、本部機能を東京に移転することになりました。ただ、子どもには学校もあるし、まずは私が1人で東京へ行くことにしました。後から家族を東京に呼ぶことも検討しタイミングを探っていましたが、やはり家族は住み慣れた岡山への愛着があること、また震災が起きたことで家族を東京に呼ぶことは徐々に現実的ではなくなり、結果的に東京での単身赴任生活が続きました。寂しさはありましたが、それでも東京での仕事は面白かったですし、やりがいがもありました。しかし、44歳になった頃から、「このまま定年まで家族と離れて暮らすのだろうか」と考えるようになりました。子どももいつの間にか成長しているし、自分もどんどん年を取ってきていましたから。実際に行動するきっかけになったのは、長男の大学進学です。東京の大学に進学するのであれば、東京で一緒に生活するつもりでしたが、大阪の大学に進学することが決定。岡山・大阪間は近いですし、私が岡山へ帰る決心をしました。
転職活動はどのように進めましたか?
実は、転職する1年前から活動を始めていました。いずれ岡山に戻ることは以前から考えていましたし、いきなり転職活動をしてもなかなか見つからないだろう、と思っていたからです。40歳を超えると、それなりの年収も必要になってきますからね。まずは、さまざまな転職サイトや今回サポートして頂いたリージョナルキャリア岡山を含めた複数の人材紹介会社に登録。自分の状況を話し、「今すぐには転職しないが、情報収集をしたい」と正直に相談しました。すると紹介会社の方も理解してくれて、「どんな求人があるのか、情報をお伝えします」と言ってくれました。ただ、やはり求人はあまりありませんでしたね。当初、希望職種を「経営企画」にしていたからかもしれません。主に上場企業しか経営企画という部署はないですし、中小企業ではそれを「経理」や「総務」が担っている場合が多いですから。職種名にこだわるのではなく中身を重視すべきですよね。そのようなことをアドバイスしてもらえるのも紹介会社の良いところだと思います。リージョナルキャリア岡山から今の会社を紹介してもらってからはすごくスムーズに進みました。
今の会社に決めたポイントは?
前職とは業種や企業規模が異なりますが、表面的な企業規模ではなく、地方の歴史ある優良企業であることや、幅広く業務を担える点が自分に合っていると思い決めました。勤務地は、自宅から20kmくらい。電車を使っても、1時間程度で通うことができます。それに、「化学メーカー」ということも私にとって魅力でした。実は、大学時代に化学を専攻していて、1社目も、化学系の機械メーカーで技術職に就くつもりで入社したのです。入社直後に欠員が出たということで配属は経理になり、そこからこれまで管理部門でやってきました。ですから技術的なスキルはありませんが、それでも化学に少しでも関わりのある企業に身を置きたいな、という考えはずっと持っていました。
早めに準備を始めたから、転職市場の現状や自分のスキルを整理できた。
転職していかがでしたか?
これまで経験したことのないこともありますし、やはり会社が変われば仕事の進め方も異なるので、勉強、勉強の毎日ですね。インターネットで調べたり、本を読んだりしながらやっています。それも新鮮ですよ。1人で何でもできるようになりますからね。小売業からメーカーになり、会社の規模も小さくなりました。社風の違いは感じます。例えば、会社の行事が多いことなどですね(笑)。皆で集まって何かをする、ということが前職ではあまりありませんでしたから。でも、いろいろな人と話ができるので、それも良いですね。
生活面の変化はいかがですか?
家族との時間がちゃんと持てるようになりました。下の子は高校生なのですが、子どもの成長をちゃんと見ることができるのは嬉しい限りです。受験の話もできますしね。長男の時は、中学、高校時代の姿をほとんど見られませんでした。気がついたら大きくなっていたし、声変わりもしていた、という感じ。親戚のおじさんと同じですよ。親として何にもしてやれなかったという思いがあります。だから今は、下の子との時間を大事にしたいと思っています。それに、自分が建てた家にもやっと住めました(笑)。この家を建てた矢先に、東京に転勤することになったので。それから岡山は食べ物も美味しいですね。海が近いので魚も新鮮だし、果物も美味しいし。休日もどこへ行っても東京ほど混雑しておらず、ゆったり羽を伸ばせるのが地方の良いところですね。
困っていることや課題はありますか?
あまり思い当たらないのですが、強いて言うなら、車が1台しかないこと、でしょうか(笑)。こちらでの生活にも慣れ、ワークライフバランスというか、自分の生活スタイルができてきました。妻は妻で自分の生活スタイルがあるので車の取り合いです(笑)。会社への通勤は電車ですが、休日に車が必要になることもありますからね。事前に妻と調整しないといけません。東京では車の必要はありませんでしたが、こちらでは必需品です。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
人によって価値観は様々だと思いますが、「自分にとって大事なものを、大事にしてください」と言いたいです。そのためにはまず、「何が大事なのか」を考えないといけませんよね。私も転職前はかなり考えました。仕事は大事。だけど、何のために働いているのか、その答えが、私には「家族」でした。だから、東京での仕事は面白かったけれど、家族との時間を選びました。早めに活動を始めたのもよかったですね。どのような求人がどのくらいあるのか、ということが頭の中で整理できましたし、いろいろな求人にふれるたびに、自分にはどんなスキルがあって、何が足りないのかを考えることができますから。足りないものを補うための勉強もできますしね。表面的な企業規模ではない地方の歴史ある優良企業の情報を自分だけで得るのも大変なので、そういったことからも早めの準備はおすすめです。