株式会社林原
西田亮輔さん(仮名・研究開発) 29歳
コンサルタントに「実状」を教えてもらったことで、Uターンする覚悟が決まった。
医薬品などの原料を手掛ける素材メーカーで研究職として活躍していた西田さん。仕事内容に不満はなく、妻も関東での生活に満足していたという。
そんな西田さんのUターン転職が現実味を帯びたのは、父の大病だった。それをきっかけに「自分はどうしたいのか」と真剣に考え、「地元の岡山に戻る」という結論に至る。
現在は、岡山で自身の経験を活かして働きながら、家族とともに過ごせる喜びを感じているという西田さんのUターン転職体験談を紹介する。
※本記事の内容は、2021年8月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 0回
- 活動期間
- エントリーから内定まで123日間
転職前
- 業種
- 医薬品・食品原料メーカー
- 職種
- 研究開発
- 業務内容
- アミノ酸の生理機能の研究
転職後
- 業種
- 医薬品・食品原料メーカー
- 職種
- 研究開発
- 業務内容
- 医薬品や食品などに使用できる有用な新素材の探索
父の大病をきっかけに「自分はどうしたいのか」を考えた。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
基盤研究部の素材探索研究課に所属し、新素材の探索を行っています。土の中にいる微生物をスクリーニングし、食品や化粧品に使用できる有用なものを見つけることが私の仕事です。
土は社内の皆で手分けをして国内のいろいろなところから持ち帰ったものが研究所に集約されています。同じ地域であっても時期によって土の状態は異なりますし、同じ土であっても培養条件など調べ方によっても結果は異なります。
とにかく粘り強さが求められ、すぐに成果が出る仕事ではないのですが、想像もしていなかったような反応が見られた時には、気持ちが昂り、とても興奮します(笑)。まだ実際の製品化までは繋がっていませんが、学術的に価値がある新しい酵素を発見し、研究を続けているところです。
入社前のご経歴を教えてください。
九州の大学で食糧化学を専攻し、新卒で原料メーカーに入社しました。その会社ではアミノ酸の生理機能を動物やヒト試験によって研究する仕事に携わっていました。
自社製品に付加価値をつける仕事で、顧客である食品会社などに食品素材として採用してもらうために機能性を評価し、データをまとめていました。その他、国内外での学会発表や論文投稿、特許出願に加え、各種競技団体や大学を訪問しての啓発活動などにも携わっていました。
転職のきっかけは?
急な出来事だったのですが、父親が癌を患っていることがわかり、それがきっかけで転職活動を開始しました。
就職で関東に出ましたが、私は長男ということもあり本当に漠然とですがUターンについて意識はしていました。とはいえ、会社や仕事に不満はなく、むしろ本当に良い会社でしたので具体的に考えたり動いたりということはありませんでした。
また、結婚をして、妻も自分が働く職場や関東での生活に満足していたので、地元への意識はありつつも「このまま関東で生活していくんだろうな」とも思っていました。
ところが、父親が緊急入院することとなり、どうなるのかわからない不安な状態の中で「自分はどうしたいのか」と考え、その結果「地元の岡山に戻る」という結論に達しました。
私も妻も職場への満足度が高かったため正直なところ躊躇する面もありましたが、それでも家族の近くに戻りサポートしたいと思いました。そして何より、妻が地元に戻ることを後押ししてくれたという点が大きかったと思います。
転職活動はどのように進めましたか?
まず最初に、大手エージェントに登録して面談に伺いました。ただ、担当のコンサルタントが岡山の企業に詳しくなく、求人票の内容をそのまま話しているだけで、会社の状況やその他のリアルな情報を得られなかったので、少し頼りなさを感じました。
そこで、もっと岡山の企業に詳しい人に相談したいと思い、調べたところ辿り着いたのがリージョナルキャリア岡山でした。ちょうどタイミング良く東京で相談会が予定されていたので、すぐに予約して妻と一緒に伺いました。
その相談会でコンサルタントの瀬川さんとお会いしたのですが、瀬川さんは岡山の企業のことを非常によくご存知だったのですぐに信頼できるなと思いました。また、印象的だったのは、瀬川さんがUターン転職の実状を包み隠さず話してくれたことです。
私は父のこともあってUターンすることは決めていたのですが、だからと言って、瀬川さんはすぐに求人を並べるのではなく、Uターン転職のメリット・デメリットや、企業についても良い面もあればそうでない面もあることを率直に話してくれました。それによって、前のめりだった私も一度立ち止まって冷静に考えられるようになりましたし、その上で、本当の意味で覚悟が決まりました。
今の会社に決めたポイントは?
地元岡山の企業で昔から知っていましたし、大学での食品の機能性研究についての知見や、それらを活かして前職でアミノ酸の研究に携わっていたことが、最大限活かせるだろうと考えたことです。会社が目指していることと、自分がやってきたこと、やっていきたいことが一致していると思いました。
また、面接で会った社員もみな非常にソフトで、アットホームな印象を持ちました。伸び伸びと研究ができそうな印象で、前職と似たような会社の雰囲気なんだろうなと感じました。
両親や祖父母らと子どもを囲んで過ごせる幸せ。
転職していかがですか?
仕事の面では、これまでの知識や経験が最大限活かせると言いつつも、仕事内容はがらりと変わりましたので、一から学び直すことも多く最初は大変でした。研究所にある過去の報告書や海外の論文に目を通すのはもちろんですが、「場数を踏む」というか、やはり実際に手を動かして実験を繰り返すことが大事なので、自分なりに一生懸命頑張ってきたつもりです。
幸いなことに、上司や先輩に教えを乞うと皆本当に親身になって教えてくれて、聞いたこと以上の情報を返してくれるのでとても勉強になりますし刺激をもらえます。ようやくこの1~2年ぐらいで、今までの知識とあわせて新しいことを考えていけるようになりました。
これからは、やはり製品に繋がる成果を出したいですね。どうやればそこに繋がるのか考えながら、しっかり手を動かして粘り強くやっていきたいです。
また、研究部門だけでなく社内のいろんな部署の方々との人脈を広げていく重要性も感じています。製品化は研究だけで実現するものではありません。様々な部署の方々の協力があって、そこに繋がっていきますから。
それから、私ももうすぐ30代半ばとなり、若手のメンバーも増えてきましたので、自分で手を動かすことだけでなく、若手の指導や育成にも積極的に関わっていきたいと思っています。
生活面の変化はありましたか?
子どもが生まれて父親になりました。子どもが生まれてなおさら実感しましたが、岡山に戻って来て本当に良かったと思います。
もし仮に関東で仕事をしながら子育てをすることになっていたら、とても大変だったろうと思います。今は実家が近いぶん、両親に頻繁に会えますし、子どもが熱を出したときに、母に頼ることもできます。実際に育児をしてみて、親が近くにいることを心強いなと思いました。
父親も一時はどうなるかと思いましたが、元気になりましたし、我が家は祖父母も健在なので、両親だけでなく祖父母にも子どもと気軽に会いに行けます。
もし関東で生活をしていたら、地元に帰れるのは大型連休の時ぐらいだと思いますし、今のコロナ禍においては帰省自体が難しいので、子どもが一番かわいい時期を祖父母に見せてあげられなかったと思います。近くに妹夫婦も暮らしており、我が子と妹の子どもは同い年で同性なので、仲良く遊んでいます。
妻も転職して通常勤務で働いているので、「戻ってきて良かったね」と言ってくれています。ちなみに、妻の転職も瀬川さんにお世話になりました。夫婦ともども、本当に感謝しています。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
家庭を持っている方やパートナーがいる方は、転職活動を本格化させる前にしっかりと話し合って理解を得ることが大事だと思います。私の場合は幸いなことにUターンを妻が後押ししてくれました。話し合った結果「家族のことが大事」という点で妻と考えが一致したことが本当に大きかったです。
ただ、必ずしも考えが一致するとは限りません。それでも向き合って納得のいくまで話し合った上で決断をすることがとても大事だと思います。