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人と製品が活性し、「おもしれぇ」ことを生み続ける企業。

萩原工業株式会社
代表取締役社長 浅野 和志

更新日:2018年10月03日

86年 広島大学工学部卒業
   萩原工業入社
07年 取締役
15年 取締役常務執行役員
16年 代表取締役社長
※所属・役職等は取材時点のものです。

身近なところで当社の製品が皆さんの生活を支えています。

萩原工業は、合成樹脂繊維であるフラットヤーンのトップメーカーです。フラットヤーンとは、ポリエチレン、ポリプロピレンのフィルムをスリット(短冊状に切断)し、延伸することで作られる強く平らな糸です。これを織ることにより、薄く強い織物を効率よく作ることができます。

フラットヤーンを素材として用いた製品は、ブルーシートをはじめ、サッカースタジアムや球場の人工芝、工事中の建物を囲っている防炎・防音・防塵シート、ファッション・インテリア分野、農業用資材、食品包装、家電部材、建築素材、梱包材など世の中のあらゆるニーズに応えています。防音性や通気性、難燃性、遮光性、耐熱性など現場ごとに異なる様々なニーズがあるため、品ぞろえは約400種類に及びます。また、フラットヤーン技術を応用したスリッター等産業機械の製造・販売も行っています。

近年はアジアなど海外市場の展開を強化しています。現在はインドネシアを中心に、セメント運搬などの用途に使う樹脂袋やコンクリート補強用繊維「バルチップ」をフル生産中です。バルチップは、コンクリートに混ぜることで建造物の耐久性を向上させることが可能です。経済成長を背景にインフラ開発が活発な新興国向けなどに販売を伸ばしています。

意図的に不安定な状態をつくり出す。

創業者の口癖、「おもしれぇ 直ぐやってみゅう」が当社の行動指針であり、DNAです。新しいニーズや市場、技術、素材などと出会ったときに、すぐに行動に移そう、失敗を恐れずにチャレンジしよう、ということです。そうすることで自分たちの技術が磨かれ、世界中の人たちの生活に役立つ製品を提供することができるわけです。

創業来、この言葉を大切にして取り組んできたからこそ、フラットヤーンの技術が磨かれ、数多くのヒット製品が生まれ、その結果会社も成長してこれたのです。わかりやすく言えば、安定してしまったらそこで終わり、ということだと思います。本来人間は安定を求める生き物ですから、意識をしなかったり仕組みがなければそこで安心して立ち止まりますよね。しかし、それではお客様に新しい価値を提供することはできませんし、このグローバル競争の中で生き残ることはできないでしょう。

会長は「萩原工業を潰せ」と良く言うんですよ(笑)。外からやられる前に、潰されるようなことを自ら先に先にやっていこう、と。高速で回っているコマのように、不安定の中で安定している強い状態を作り出したい。会社としてより強くなるために意図的に不安定な状態にするということを常に意識していますね。

課長職以上は6年でローテーション。

例えば、課長職以上の人は6年でローテーションする、という制度を1年半前に導入しました。同じ部署に6年以上はいられない、ということです。本当は6年でも長いかなと思っているのですが、目的は部署に神様をつくらない、ということです。

管理者が同じ部署に居続けるとその人は絶対的な存在になり、周囲はその人のやり方に従うようになってしまいますよね。そうなるとどうしても新しい発想や変化が生まれづらくなります。でも環境や顧客のニーズはすごいスピードで変化していってるわけです。仮にその管理者が優秀で部署がうまく機能していたとしても、その管理者はその先何十年も居続けるわけではないので、むしろ違う部署に行ってその部署に新しい風を吹かしてもらいたい。

実際に、管理職が変わることで部署の雰囲気がガラっと変わり活気が出る、ということを、何度も見てきました。個人としては不安定なことでしょうが、数年後に必ず変わるという前提のもとで、それを見据え、変化することや不安定な状態が当たり前、という感覚になってもらえると、会社はより強くなると思います。

中途入社もハンデなし。出戻りもウェルカム。

中途採用も、いい意味で組織を不安定にするひとつの手段だと思いますね。自分たちが知らない世界のことを知っている人が来てくれると、刺激になりますよね。ですから、条件に応じて出戻りもOKにしました。一度外に出て、外を経験した上で戻ってきたいという社員はウェルカムです。

随分前ですが、派遣社員として働いてくれていた人がいまして、その人はすごい優秀で仕事ができるんですけど、半年働いたら残りの半年はサーフィンをするためにオーストラリアに行くんです。そして帰ってきたらまた半年間当社で一生懸命働いて、またオーストラリアに行くんですね(笑)。この人は今は当社の正社員として働いてくれているのですが、すごく印象に残ってるんですよ。世の中色んな生き方、考え方の人がいるんだな、と。色んな人に選んでもらえて、色んな人が活躍できる会社でないといけないな、と当時強烈に思いました。

今の時代にあった仕組みや体制を整えていきたい。

今は、定年後、雇用延長で65歳まで働いてくれる人の賃金制度に手を入れようとしているところです。従来の制度では、定年と同時に給与が大幅に下がってしまうのですが、それはやはりモチベーションの維持が難しい。非常に難しいところではあるのですが、悩みながら議論をしているところです。

女性採用についても、これまでは事務職がメインでしたが、製造現場でも積極的に採用していきたいです。女性の視点で現場を見てもらうことで整理整頓など新しい仕組みをつくってくれて生産性を高めてくれると思うんですね。

と言いつつ、お恥ずかしいのですが実は数年前まで一部の工場には男子トイレしかなかったので、女子トイレを作りました。やはりインフラが大事ですから。ちょっとしたことかもしれませんが制服も作り変えましたし、社内外の広報も変えました。岡山県は全国屈指の待機児童エリアということもあって、企業主導型保育所も開園しました。

まだまだ遅れている面もあると思うんですが、「おもしれぇ 直ぐやってみゅう」の精神で、今の時代にあった仕組みや体制を整えていきたいですね。

編集後記

チーフコンサルタント
瀬川 泰明

萩原工業は「切る」「伸ばす」「巻く」というの3つのそれぞれの技術を磨き上げ、合成樹脂加工製品においてトップシェアを誇っています。それだけの高い技術やシェアを誇っていますと技術偏重になりそうですが、技術と同様に組織人事、働き方改革に力を入れ、様々な施策を積極的に導入されているのは、浅野社長が総務人事に在籍され、長年人と向き合ってこられたことが大きいのではないかと感じました。

技術だけではなくビジネス、ファイナンス、マーケティング。競争を勝ち残るためにどれも欠かすことはできませんが、それらを担うのはやはり人です。人の可能性を信じ、人の成長のために投資を惜しまない、浅野社長率いる萩原工業の今後の更なる成長がとても楽しみです。

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